自社サイトをAIネイティブで作り直した全体像|変わること・変わらないこと
私たちは自社のコーポレートサイトを、制作から公開・運用まで、AIネイティブで作り直しました。本記事はその全体像です。結論から言うと、AIで「速さ・コスト・作り方の主導権」は大きく変わりました。一方で「人の判断・一次情報・ブランド設計」は、変わらず人の仕事として残りました。
「AIでサイトは作れる」という話はもう珍しくありません。この記事はその一歩先——**実際に自分たちのサイトを作って、公開し、日々運用している側から見た「変わったこと/変わらなかったこと」**を、率直にお伝えします。あわせて、続く各回(素材選び・道具選び・運用)の入口にします。
AIで変わったこと、変わらなかったこと
まず、何が変わって、何が変わらなかったか。ここが全体像の芯です。
変わったこと(主導権とスピード)
- 速さ:ページの土台づくりや、繰り返しの多い作業が一気に進みます。ゼロから人が組むより、はるかに速い。
- コスト構造:これまで外注していた部分の一部を、自分たちで回せるようになりました。
- 作り方の主導権:思いついた案をすぐ試し、公開してからも回しながら直せる。「作って終わり」から「育て続ける」へ変わりました。
変わらなかったこと(人の領域)
- 判断:誰に何を伝えるかの方向性、品質の合否、「これで世に出していいか」の最終判断は、人がやる領域のままでした。
- 一次情報:記事も含め、価値の源泉は自分たちの実体験です。AIはそれを整理・言語化できても、経験そのものは作れません。
- ブランド設計:紺×金の世界観や「集客×DXの両輪」という軸は、人が決める核心です。
世間では「AIだけでは失敗する。だからプロに頼もう」とよく言われます(実際、その論調の記事は多くあります)。私たちの実感は、もう一歩具体的です。失敗の正体は「AIの能力不足」ではなく、目的や判断という“上流”を渡さないまま、手順だけをAIに任せることにありました。この点は別記事「AI活用で成果を分けるのは手順ではなく上流」で詳しく書いています。
だからこのシリーズでは、「AIに任せていい所と、人が握る所の線引き」を軸に、実際の現場を順に開きます——素材選び(AIで素材選びを内製化した実録)、道具選び(CMS選びの判断軸)、そして運用の設計(AIネイティブなサイト運用)。きれいな結論ではなく、つまずきと判断の中身を残します。
ここまでが全体像です。ここから先は、これを支えた技術スタックの詳しい話になります。仕組みに関心がなければ、最後の「まとめ」まで読み飛ばしていただいてかまいません。
採用したスタックと、その変遷
最初から今の構成だったわけではありません。試行錯誤の末に、今の形へ落ち着きました。
- 制作AI:初期は別のコーディングエージェントを使い、日本語の文字化けやスクリーンショット失敗に当たって、自己完結した指示と非スクショ確認で回避。以降の主軸はClaude Codeへ。
- フレームワーク:素のHTMLから始め、一時はNext.js/Vercelを検討したものの、既存の運用ノウハウを丸ごと流用できる側へ戻し、Astro+Cloudflare Pagesに着地しました(“最新”より“使い続けられるか”を優先。この判断は道具選びの回で詳述します)。
- CMS:JSON自作 → microCMS検討 → 最終的にSveltia(Gitベース)。理由は道具選びの回で。
- 運用:常駐サーバ中心から、クラウド上のAIを司令塔にし、状態はGitに置く形へ。クラウドのAI環境は揮発する(その場限りで消える)ので、**「Gitが唯一の真実」**を前提に設計しています。
補足として、2026年には、私たちが使う Astro を Cloudflare が買収したと報じられ、「AI × Astro × Cloudflare」で誰もが高速にプロ品質のサイトを展開できる、という方向が業界として打ち出されています(Publickey)。私たちが試行錯誤の末に落ち着いた構成が、奇しくもその本流と重なった形です。狙って当てたわけではなく、「自分たちで回せること」を優先した結果が、たまたま時流に乗っていた、という方が正直です。
それぞれの判断の中身(なぜそのCMSか、素材をどう選んだか、運用をどう設計したか)は、各回で具体的に開きます。
まとめ:AIネイティブは「道具」より「主導権と設計」の話
最後に、全体像としてお伝えしたいことです。
AIネイティブとは、最新ツールを使うことではありません。「作る → 公開する → 運用する」を自分たちで主導し、回しながら整えていく体制を持つことです。変わったのは主導権とスピード、変わらなかったのは判断と一次情報——この両方を同時に見ておくことが、AIで成果を出す中小企業と、出せない中小企業を分けます。
丸投げでも、全部を抱え込む内製でもありません。どこを任せ、どこを自分で握るかの線引きと、その設計。それが、これからの自社サイトとの付き合い方になります。本シリーズで、その現場を一つずつお見せします。